何故こんなに簡単なモデリングに悩んでいたのか そこには今回、龍を3DCGで作るにあたり決めた3つの約束が関係しています。
一つ、鱗の流れに齟齬を出さないこと!
一つ、2010年に作った龍を上回ること!
一つ、自分の描いてきた龍画の特徴を再現すること!
これです。
【鱗の流れの大切さ】
私はダイナミズムのために規則性を排することが嫌いです。筆特有のテクスチャーを使いたい,和紙のノイズ感が欲しい,等々思うことは勿論あります。事実それらを使わず作られたものは明らかな物足りなさを生むでしょう。しかしそこではない部分にこそ、本当のダイナミズムが隠れているのだと思うのです。
こんなことを言うと『狩野探幽の龍の鱗の流れだっておかしい部分があるじゃないか!でもあれらはダイナミックな絵だろ!』と言い出す人がいるでしょう。しかし、私に言わせればあれは寧ろ我々の見聞を超えた規則性の極致なのです。息を吐くかの如く規則性を乱す線を引くには、また別の部分により強固で絶対のロジックがあるということなのです。それは『ここいらで鱗に歪さを出そう』という自覚,無自覚を織り交ぜた、大変大きな規則性です。あれを素人が味だなんだと言って交じらせると大事故です。餓鬼の落書き感をこさえて終了します。
そういった意味で鱗の流れを蔑ろにした造形には絶対したくないのです。
【2010年の龍作品から5年経ったが状況は全く変わっていない】
私は2010年、大学3年の春にちょっと真面目に3DCGで1つ映像を作ってみたくなり、龍の作品を作りました。当時、大学の授業ではやっとMayaで「ポリゴンモデリングとは?」みたいな授業をやっているような状況だったため、Mayaのヘルプを見たり,まだyoutube1強でないが故に海外の色々な動画サイトから情報を集めたりしながら「リギングってなんだ?」「IKダイナミクス?」といったようなことを学び、5ヶ月かけて作ったのを覚えています。
あれから5年。翌年の卒業制作ではCINEMA 4D学生無償版を使ってアニメーションを作り、2012,2013と間を空けて昨年CINEMA 4D製品版を買い和蛇ちゃんを作りました。他にも幾つかの仕事でCGを作っています。
しかし私のCG制作の歴史には初めて龍を作ったときから常に一つの不安材料が有りました。
……パソコン。時を戻して2010年の3月、私はiMac core i7を買いました。このパソコンを今でも使っています。元々2Dデジタルアートをやっていた私がpainter11をMacで覚えたい!と思い買ったものです。……当然、Mayaで4分のアニメーションをHDで書き出すのも、c4dで4分のフルHDを書き出すのにも、明らかにパワー不足でした。……なんでこっちに来たんでしょうねw
いくら当時より絵が格段に上手くなったって,c4dの理解が多少深まったって、パソコンがポンコツだったらどうしようもないんです(´・ω・`)
【自分の描いてきた龍を再現するのは意外と楽】
これは多少理想が低いといいますか、やはり和柄を愛する者として手描きの龍には到底及ばないということがわかるのです。無駄な足掻きはしません(Twitterでもその辺のことをつぶやいてましたねw)。その上で自分の中で3D空間上の龍のあるべき形というのは既に出来上がっているので、あとはプラモデルのように組んでいくだけです。……まぁ、説明書がないんですけどね。……アイデアはあるのに。
つまり、まとめるとこういうことです。
手負いのパソコンで当時新品のパソコンで作った作品を越えるにはモデリング、リギング、そしてアニメーションまでを見据えた制作プランを練る必要がある。
ポリゴン数を抑えたりリギングやレンダリングに相当な工夫をしない限り、前回以上の龍どころか真面に完成すらしない可能性があるのです。因みに2012年に当パソコンはグラボが2回焼き切れて修理に出しています……(´;ω;`)
そこでまずやってみたのがこれです(下記手順の3の段階)。
【photoshop→crazy bump→c4d】
手順1、photoshopで白い円を作成し1列に並べる。
2、そこにドロップシャドウを適用したものをうろこ状に並べる(欲張ってお腹も作った)
3、その画像をcrazy bumpというソフトに持って行き、normalmapに変換。
4、3で作成した画像をc4dの板ポリに貼り付け、屈曲デフォーマで巻く。
でこれがどうなったかというと・・・
……しょっぱいね(つんく♂)
なんかもう色々ダメです。いくらphotoshopでエッジをピンピンに立たせてもc4dで読み込んだときには溶けたアイスキャンディみたいになってますし、銀杏型の付け根が消えちゃってます。
あと私の描くジャンルの龍の絵は手足で鱗がギザギザの突起に変わります。それがこいつじゃ再現できません。
【c4d→xnormal→photoshop→c4d】
次に考えたのがこれです。手順
1、c4dで円柱を並べて鱗をモデリング、UVは自動展開(バラバラになるけどok)。
2、ローポリ版(板ポリ)を同じサイズで作り、UVもtopビューで正面展開しておく。
3、objでエクスポート、xnormalでローポリ版にベイク。
結果は?
いいかんじ(`・ω・´)b
割とここまで来るのが大変だったのは『ハイポリ版の作り方が今時こんなにクソ面倒なわけがない!アジの開きを海水につけたらお腹くっ付いて生き帰んのか?黒魔術かよw』という疑念から、板状のハイポリに合わせて全く別のロー板ポリを作るという逆転の発想が霞んで見えなくなっていたからですね。猛省。
https://twitter.com/kota_nakatsubo/status/570202772005466113
前述した手足の突起形状もハイポリを作ってから板ポリを加工して同様に再現しています。
これを最初の画像のように指につなげるには、突起形状をもう一列横の鱗に適応したり,それに合わせて対称用の突起形状のnormal mapを作ったり,連続して使えるように腕のnormal mapをphotoshopで加工したりとまぁチマチマと似たような作業をする必要があり骨が折れました。
最終結論。これは私にではなく、万が一でも紆余曲折した末にこんな馬鹿なことをするかもしれない皆様に当てた解です。
1、正方形からニベアの青缶が生えてるような形を一つ作ります(uvは自動展開)
2、同じ大きさの正方形の板ポリを作ります(UVはtopビューで正面展開)
3、obj形式でエクスポート,xnormalでローポリにベイク。
4、3で書き出した画像からphotoshopで円部分を切り出し透過で保存。
普通に龍をモデリングし綺麗にUV展開、4で切り出した丸をphotoshopでUVに沿ってうろこ状に並べればクソ簡単に全て解決。
ほんとクッソがwww
というわけでピッケル片手にやっと山頂が見えてきたあたりでロープウェイ見つけるみたいな?
そんな毎日?w
fuckだぜ!
今回のチビ和龍、相当なデフォルメをし、その分より生き生きとした動きをつけ、且つフラットデザインなど時代の恩恵を最大限に活用し、1分以下の映像を作るということを目標にやっています。みなさんどうぞ今後とも応援よろしくお願いいたしますm(_ _)m
後々にはこいつと一緒にUE4とかを使って簡単なインタラクティブ作品をつくれたらいいなと思いますけど……それはまだ少し先ですねwでは長々と失礼!