12年前の梅雨、2年4組の教室で友人の替え歌を聴いた。廊下側の前から2番目と3番目の席に座りながら。
どこかで聴いたことのあるメロディー。
精子のテーゼがどうとか。しかし、何の曲かはよく知らない。
「ん?ほんと?お前、エヴァ知らないの?」
「あぁ、ロボットアニメの?」
当時オタクとは程遠いメンバーの中でされた、たった数分の会話。友人のお下劣な歌詞の内容は右から左へ消えていったが、その後も何かこの曲が引っかかっていた私がレンタルビデオ屋に足を運ぶのにそう時間は掛からなかった。
「西暦2015年 第3使徒サキエル襲来」
第壱話冒頭で物語の時代設定が2015年であることを告げられると、27分後には画面の前に一匹のオタクが誕生していた。
タン\(`・ω・´)/ジョウ
12年前のあの日、初めて真剣にアニメーションを見た私は、遠い先にある2015年を確かにSFの引き出しに仕舞っていた。
今年、宅配物が空を飛んでやって来るための法整備に世界中が躍起になり、空を飛ぶ自動車の試験飛行が行われた。
実際の2015年なんてこんなもん。それでもエヴァ初号機が踏み潰しそうになった公衆電話はほとんどの場所から姿を消し、電車でカセットウォークマンから音楽を聴いている人もほぼいない。携帯電話からほとんど全てのことができてしまうと聞かされたら、12年前の私は同じくSFの引き出しにこれらを仕舞うだろう。
発売日に3冊ずつ買っていた『エヴァンゲリオン・クロニクル』の10巻セット豪華特典付き発売のニュースでエヴァに愛想を尽かし、気付けば3年間TVアニメすら見ていないというのも、当時あれだけエヴァに心酔していた自分に聞かせれば十分SFかも知れない。
そんなことを思いながら、夢にまで見た2015年が終わる。そして人生で全く想像したことのない未来がもうすぐ始まる。