レトロな雰囲気の雲龍図です。画中の左上の圖は図の旧字体です。
その昔、大日本帝国政府軍用手票というものがありました。占領地で軍が使う手形で政府が発行する紙幣です。満州国辺りで使われていたものは龍の絵が描かれていて非常に格好いいものでした。
今回は少しそれのイメージを頭に描きつつ、赤白黒の3色間で表現したかったのですが赤の彩度でミスって色を増やしたりしてこうなりました。龍の顔の角度や構図,色と、普段とは微妙に雰囲気を変えています。
鬼火の細部です。白の余白は0.2mm~0.8mmぐらいで残してます。中央に向かう暈しは散らしに近い手法を取り入れてます。前回の水墨画でも背景にやっていました。
雲も欄間彫刻などでよく見られる雲海のスタイルと水墨画の暈しでモクモクにするやつの2種類を混ぜました。…雲の中から出てきたように見せるために線から塗りまで全ての絵の具を薄くしていくのですが・・・難しい。
江戸以前の浮世絵や水墨画の方が古いのにもかかわらずどこか革新的で、旭日旗的な太陽光線を使うと時代に縫い付けられているような雰囲気になりますね。江戸時代における浮世絵はずっと幕府と戦っていたので、対勢力のバイタリティーで言うと左翼的な芸術の象徴のように思います。しかし、明治維新,文明開化,脱亜入欧と時が流れていく過程でどこか右翼的な性質をも帯びてきていますよね。この辺の複雑な国情も浮世絵の魅力の一つだと思います。
描き終えてみて幾つか思うところはありますが、ここ数匹の龍で模索している胴体の水墨画的な凹凸感は少しずつものになっている感じがあります。
次の絵からは積極的に捻りや揺らぎのようなものを混ぜていきたいです。